大判例

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横浜地方裁判所 昭和44年(ワ)704号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕被告主張の過失相殺について案ずるに、

先づ、被告は原告が当時本件事故現場にさしかかつた際突如として左折を命じたものであり、そのことが本件事故の一因をなしている旨主張し、<証拠>を綜合すれば被告主張のような態様で左折を命じた事実が認められ……る。

なるほどタクシーの乗客は自己の行先、左右折及び停車等につき運転手に対し早目に時宜に適した指示を与えることが望ましいことであるが、その反面少くともタクシーの運転手たるものはたとえ乗客から不適切なる指示を受けたとしても漫然それに従うべきでなく、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ交通法規に則り他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない義務があり、これによつて一般的に営業車たるタクシーが快適にして安全な旅客運送の目的を達しなければならないと解さるべく、他にいかなる条件や事情があつても原則としてこの義務を阻却することはできないといわねばならないから、この点についての被告の主張はこれを採用するに由がない。

更に、被告は、原告は当時飲酒しており車両が左折すれば当然身体が右に傾くことを承知しながらそれに対処することなく漫然と乗車していたため車内マット上に倒れて受傷した旨主張し、原告が当時相当飲酒していたことは<証拠>を綜合してこれを認定することができ、この点についての<反証排斥>「原告が車内右側ドアに身体を打ちつけた。」事実は<証拠>によりこれを認めうべく、これを覆すに足る証拠はない。

然し、本件自動車の左折の態様が前認定のとおり(編注――三〇ないし三五粁の速度で徐行せず左折した)であることに徴すれば、原告がたとえ飲酒せずして乗車していたとしても前認定の傷害を負う可能性は十分にあつたことが認めらるべく、即ちその間には相当因果関係があるといわねばならないのであるが、更に翻つて考えると<証拠>により認められる「原告が飲酒していたため運転手野嶽に左折個所を指示するにつき数回に亘りあいまいなことをいい、最後に突如本件左折場所を指示し、かかる一連の行動のうちに同運転手が思わず急激な左折をした。」事実に徴すれば、かかる乗客の指示方法は不適として非難されても致し方ないところであつて(もつとも、だからといつて前示タクシーの安全運転及び運転手の注意義務を一般的に否定するものではない。)、このことは原告の自己防衛の注意義務を欠いたものとして同女の過失と解さるべく、本件損害賠償の額を定めるにつきこれを斟酌すべきである。その結果、本件損害の数額は合計金二二〇、五五〇円を相当と判定する。(若尾元)

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